会社勤めをしていると、毎年のように退職者が一人くらいはいるもので、その時に誰もが、相手に何をプレゼントしたらいいのか悩む人は多いかと思います。
家族や友達ならある程度好みが分かるからいいですが、職場であまり関わりのなかった同僚や上司となると、どういうものをあげたら喜んでくれるのか全然見当がつかないですよね。
多くの人がインターネットで、人気のプレゼントランキングなどを見て参考にしているのかなと思います。
そんな私も、今年の3月で13年勤めた会社を退職しました。さぞかし同僚の皆様方は、この私に、何をプレゼントしたらいいのか悩まれたことでしょう。(本当にすみません)
結果的には、花束とプリザーブドフラワー、寄せ書き、他には個人的に、ハンカチ、ハンドクリーム、エコバック、ティーバック、お菓子などいただきました。(ありがとうございます)
最後の異動で配属になったところは、転勤して3年位しか経っていなかったので、すごく仲良くなったという人は特にいなかったんですが、
私の勝手な都合で辞めることになったのに、あまり関わりがなかったパートさん達にまでプレゼント代を負担させてしまったらしく、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
ちなみに、インターネット情報ですと、退職者へのプレゼントで人気なものとしては、
女性だと、お花、ボールペン、タオル、入浴剤、マグカップ、名入れギフト、似顔絵などで、
男性だと、名入れボールペン、名入れお酒、名入れグラス、お花、似顔絵などが人気でした。
私も当然のことながら、普段からインターネットの人気ランキングを見ては、定番にはなりますが、「名入れのボールペン」をよく人にプレゼントしていました。
そんなある日。
またいつものように名入れのボールペンを注文していた最中、ふと、退職する人の机の上を見てみてみると、色違いで同じ名入れボールペンをすでに使っていたのを発見してしまいました。
やっぱり、世の中同じことを考えている人がいますよね。
さすがにこのボールペンは渡せないなと思って、その時は、改めて別なものを買い直したことがありました。品質の良いボールペンだったので、その時は本当にがっかりしました。
他人の名前が書いてあるそのボールペンを見ながら、私が普段使うこともできず、かといって、もったいなくて捨てることもできず、本当に困ってしまいました。
その後、見かねた職場の同僚がそのペンを使ってくれるというので、名前の部分を黒く塗りつぶし、結局はタダであげてしまいました。
「名入れギフト」は特別感があって人気もあるし、もらったら嬉しいプレゼントなのは間違いないと思うんですが、
なにせ、世間の皆さんも私と同じようにネット情報を見ているわけなので、よくリサーチしないと、私のようにプレゼントが誰かと被るという大失態を起こすことがあるので注意が必要かなと思いました。
そんなことをいろいろ考えているうちに、名入れギフトではなく、お店であまり売っていないもので、誰もが喜んでくれて、特別感のあるものって何だろう?と思った時に、
女性にも男性にも喜ばれるプレゼントの中に、「似顔絵」というものがあることに気づきました。
ただ、似顔絵は世間では人気でも、私の中では、似顔絵なんて本当にもらって嬉しいんだろうか?という思いがずっと昔からありました。
私が中学生の頃に、美術の授業の中で友達のことを描くというテーマがあり、たまたま同じグループだった幼なじみの友達を描いたことがありました。
その友達は、当時すごくぽっちゃりしていましたが、幼稚園の頃からぽっちゃりで、それが私には当たり前になっていたので、何も考えず、見たまま、ありのままの友達の姿をその時は描きました。
描き終えると、その完成した絵を先生が見て、「よく似ているし、上手に描けているね!」ととても絶賛してくれて、学校の正面玄関の壁に、なんと1ヶ月も飾られることになってしまいました。
私は、他の先生からも褒められたのもあり単純にとても嬉しかったんですが、その友達はなぜだかあまり嬉しそうにはしてくれませんでした。
しばらく経ってから、
その友達と正面玄関のところで二人っきりになった際、その子から、「お腹の…三段腹のところまで描かないで欲しかったな…」と言われてしまい、ハッとしました。
写生した時はジャージを着ていたんですが、ちょっとジャージが窮屈そうでお腹のところに皺が寄っていたんですが、それが三段腹の皺だと思わずに、私はそのまま描いてしまっていました。
そんなこともあり、人の似顔絵を描いたりするときは、とくに、その人にコンプレックスがあるような場合には、似顔絵を描いてあげると嬉しいどころか、その人を傷つけてしまうことがあると、その時に初めて知りました。
だから、私は「似顔絵は誰もがもらって嬉しいプレゼントとは限らない」と、その時からずっと思っていました。
それからは、誰かの似顔絵を描くことは一切しませんでした。
そして、今から10年位前にはなりますが、会社でとてもお世話になった上司が病気で突然退職することになり、みんなで色紙をプレゼントしようという話になりました。
当時も、ネット情報では「似顔絵」が人気だったので、皆で相談して、やはり特別感のある似顔絵をネットで注文してみようという話になりました。
そして、いざ注文しようとしたら、これがまた結構料金が高いんですよね。素敵なものだと1万円以上もしました。予算はかなりオーバーでした。
でも、文字だけの色紙ではなんとなく味気なくて、特別感もないし…。
そういって、皆が困り果てていた時に、私もなんとか似顔絵をプレゼントできたらいいな思っていたので、思わず、
「私が似顔絵を描こうか?」と言ってしまったのが事の始まりでした。
あらためて似顔絵を描き初めた頃は、プレゼントするその人だけを単純に描いたものが多かったんですが、
段々と、その人がその色紙を見て後で当時のことを思い出せるようにと、その時いたメンバーも含めて描くようになりました。
さらには、本人が不快に感じない程のよくしていた癖や、皆が感じていたイメージを元に、勝手ににアレンジしていろいろ描いてみたりもしました。
他の要素を混ぜたほうが、その人の印象がストレートにならないので、もしコンプレックスがあっても、少しぼやかせるかなと思ったのもありました。
初めは似顔絵を描くことにあまり乗り気ではなかった私でしたが、描いているうちに私自身もその人との思い出を振り返りながら、なんだか楽しい気持ちなってしまい、その勢いのまま、今までに似顔絵を描いてプレゼントした人は10人近くになっていました。
ほぼ自己満足にも近い感覚になっていたのかもしれないですが、似顔絵を受け取った人たちの笑顔を見ているうちに、私も、やっぱり似顔絵はプレゼントしたら喜んでもらえるものなんだと思い始めていました。
何年も経ってから、プレゼントしたうちの一人に偶然会いました。
そして、懐かしく当時の話をしていると、笑いながらある一言を言われました。
「私って、当時あんなに顔が丸かったかな?」と。
その言葉を聞いた瞬間、もうすっかり忘れていましたが、中学生の頃に友達に言われた「三段腹は描かないで欲しかった…」と言われたことを思い出しました。
あれだけ注意しようと思っていたのに、また同じことをやってしまっていたのだと。その時から、また似顔絵を描くことが少し怖くなってしまいました。
そんなこともあって、ここ2~3年は全く似顔絵は描きませんでした。
そんな中、また職場ですごくお世話になった上司が定年退職を迎えることになりました。
本当は、今までのように色紙に似顔絵を描いてプレゼントしたいという思いはありましたが、喜ばれないかもしれない…という気持ちが先行してしまい、他の同僚が別に寄せ書きを準備していたのもあって、結局、私は何もしませんでした。
そして迎えた退職の最終日。
帰り際に偶然にもその上司と更衣室で二人きりになった時、
「私には似顔絵描いてくれないの?楽しみにしてたのにな」
と予想外の言葉をかけられました。
私が似顔絵をプレゼントしてることは、けっこう社内でも広まっていて、その上司も当然もらえるものだと思っていたようでした。
今まで自分勝手にプレゼントしていたので、私はまさか欲しい人が現れるなんて全く思っていなくかったので、とっさに、
「最近忙しくて描けなかったんですが、後でちゃんとご自宅に届けます」
と、その場しのぎで上司に言ってしまいました。
ただ、さっそく上司のためにと想いを込めて描き始めたはところまでは良かったんですが、途中から似顔絵を描くことのトラウマでどうしてもペンが進まず…。下書きの状態のまま、あっという間に退職から2年が経ってしまいました。
もう令和3年になってしまいましたが、当時は平成最後の年。
2年も経ってしまって元上司もさぞかし裏切られた気持ちでいっぱいだったかと思います。
私も自分が会社を退職するまでの最後の2年間は、心も体も疲れ果てていたのもあって、申し訳ないと思いつつも、誰かの似顔絵を描く余裕なんて1ミリもありませんでした。
そして今年、私も退職しました。
3ヶ月経ってしっかり休息し、今ではいろいろ余裕も出てきました。
先月、2年越しですがやっと似顔絵を完成させることができ、元上司に渡すことができました。
似顔絵のテーマは、「ジャンヌダルク」にしました。
身長が150cmもなく、小柄でありながらも約40年間勤め上げて、昔では珍しい女性管理職として男性社会をたくましく生き抜いてきた元上司に、敬意と称賛の意を込めて私なりに想いを込めて描きました。
元上司に、遅れてしまった謝罪とともに似顔絵色紙を渡しに行くと、
「そうそうこんな人もいたね~」
と、当時を懐かしむようにすごく喜んでくれました。
私自身は、プロでもないし似顔絵が特別上手いわけではないですが、プレゼントした人に何年か経ってから会った時に、
「今も大事に部屋に飾っているよ!」
と言われるとプレゼントして本当に良かったといつも思います。
似顔絵を本人により似せるために、良くも悪くもその人の顔の特徴を大げさに強調した(デフォルメされた)似顔絵を描くテクニックもあると思います。
確かに、特徴を強調すると素人でもなんとなく似せて描けるとは思いますが、ただ、特別な日に似顔絵を贈るという場合には、単純に本人に似せて描くことだけに重きを置くのではなく、
色紙に込められてる想いやストーリーも大事なのではないかとも私は思っています。
絵が上手い下手という技術的なことよりも、どれだけその人に想いを伝えられるかが一番大切だと思っていますし、後で見返しても当時のことを思い出してもらえるようにするのが、さらに理想的なのかなと。(ちょっと難しいですが)
そういう意味では、本来はその人のことをよく知っている人物が、似顔絵を描くのが適任者だとは思うので、たとえ素人が描く下手な似顔絵であっても、ちゃんとしたプレゼントになるのかなと思っています。
時にはお世話になっている誰かに、想いを込めて似顔絵を描いてみるのもいいかもしれないですね。
最後に、似顔絵を描くときの注意点としては、やはり本人がなんとなく気にしているようなところは、なるべく描かないようにするのが優しさであり、もらって嬉しいプレゼントになるのかなと私は思ってます。
似顔絵のプレゼントは、ほぼ自己満足に近い部分が大きいですが、需要があれば、また誰かのために精一杯描きたいなと思ってます。
それでは、また。
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