世間の皆さんは、お盆をどう過ごされているのでしょうか?昨年と今年はコロナ禍で今までとは違った静かなお盆を過ごしている人が多くいると思います。
生まれも育ちも茨城の私は、今までよその土地のお盆の様子を知ることもなく過ごしてきましたが、この今まで感じたことのない異例づくしのお盆を経験し、あらためて「お盆」について少し振り返ってみようと思います。
お盆とは、故人やご先祖様の魂が、あの世と呼ばれる世界(浄土)から、この世(現世)に戻ってくる期間のことを言うそうです。故人が生前を過ごした場所(自宅)にお迎えして、冥福を祈るとともに、霊魂を供養する時期とされています。
お盆の期間は、8月13日~16日が基本とされていますが、地域によっては、7月15日に行われる場所もあります。
私の住む地域は「8月」がお盆なんですが、同じ茨城県内でも場所によっては「7月」にお盆のところもあるのでなんだか不思議です。なぜ違いがあるのかは、明治時代に旧暦から「新暦」に変更したときに、新暦の7月15日に行った地域と従来通り旧暦の8月に行った地域があったからとも言われているそうです。
お盆というと、仏壇の前に「盆提灯」や「精霊棚」などを用意し、キュウリやナスに割り箸等を刺し、馬や牛に見立てて飾ります。
キュウリの馬はご先祖様に早く帰ってきて欲しい願いを込めた「精霊馬」で、ナスの牛はゆっくりあの世に帰って欲しい願いを込めた「精霊牛」とのことのようです。ご先祖様がこの世とあの世を行き来する乗り物に見立てているんですね。
「お供え」には、刻んだナスやキュウリとお米をハスの葉などに盛りつけたもの、お迎え団子、フルーツ、野菜、そうめん、ご先祖様の好物などを供えることが一般的のようです。
お盆は、住んでいる地域などによって色々とやり方が違うようですが、私の住む地域では、おおむね一般的とされるやり方に近いようです。いずれにしても、お盆の過ごし方がそれぞれ違っていても、先祖や故人を大切に供養したいという気持ちが一番大事ということなんでしょうね。
ちなみに、私の子供の頃のお盆のイメージというと、8/13~16日にかけての3日間はご近所さんや親戚がひっきりなしにご挨拶にやって来て、何時間も飲んで食べて大騒ぎして、そして、帰ったあとはその片付けするという嵐のようなイベントでしたね。
8月13日は一部の親戚が集まり、お供え用に柿の葉の上に「生米」「キュウリ」「ナス」を切って混ぜ合わせたものを用意してからみんなでお墓参りに行きました。14日の夜はご近所さんがご挨拶に訪れて、15日はまた他の親戚が訪れました。
私の父親は長男でしたので、お盆期間中は兄弟の家族が一同でよく泊まりに来ました。長男の嫁である母親が宿泊や食事の用意などおもてなしをしていましたが、私もはいつも近くでその様子を見ていて子供ながらにその大変さをいつも感じていました。
田舎のおもてなしと言ったら、まずは「食事」ですかね。とにかく大量の手づくり料理でお客様をもてなすという感じでした。うどんは、大鍋で何度も茹でていくつもの大皿に盛り付けて、エビや野菜の天ぷらを大量に揚げて山のように盛り付けました。お刺身は、近くの魚市場からカツオなどを数本買ってきて捌いて大皿に盛り付けました。
私は小学生のころから料理のお手伝いをよくしていましたので、母親と一緒におもてなし料理を作っていましたが、作っても作ってもあっという間に無くなるので、どこかの人気の大衆食堂のようでした。おかげで大皿料理は得意になりました。
さらに、私が中学生の頃までは親戚の三家族が集まり持ち寄った食材で庭でよくBBQをしました。最後は子供たちで花火をやって締めるという毎年恒例のイベントがありました。私がアウトドアが好きになったきっかけの一つでもありますかね。
第三者から見ると楽しそうな光景に映るのかもしれませんが、人見知りが激しかった当時の私は、お盆は人が大勢集まり過ぎて全く気持ちが休まらない大嫌いなイベントでした。いつも家の中で一人で静かにいられる場所を探していた気がします。
ただ、私がお客様を迎える立場ではなく、久々に親や兄弟、親戚、友人、知人に会うために実家に帰る立場になってみたら、お盆は生まれ育った家で気を遣わずに楽しくしゃべって飲んでゆっくり過ごせる期間ではあると思うので、また違った意味で良い思い出になっていたかもしれません。
現在は、祖父母が亡くなり従姉妹たちも大人になって随分前から泊まりに来ることもなくなりましたので、コロナ禍ではなくても静かなお盆が続いています。そこへきて今年はこのコロナ禍ですので、さらに家に訪れる人も減りこれほど何もしないお盆は初めての経験です。
昔は、大勢の人がやってきたお盆がものすごく鬱陶しくて面倒と思っていましたが、いざ、その賑やかさが無くなると、今度は無性に懐かしく感じてしまったりします。勝手なんですけどね。静まり返った仏間で一人でキラキラと光る提灯をずっと眺めていたら、ついつい思い出に浸ってしまいました。
でも、実際にはまたあの頃のように戻りたいとは思ってはないんですけどね。やっぱり大変でしたので。田舎のお盆は「大量の料理でおもてなし」が基本ですから、それがなくなっただけ私も母親も随分と楽ができました。
ただ、何歳になってもこのお盆の時期が来ると、鬱陶しくて面倒で大変だったけど、なんだかんだ楽しいこともあったあの頃のことを思い出してしまいます。
現在は、私にとってお盆とは、子供の頃に過ごした昭和の時代に一瞬でタイムスリップしたかような気持ちにさせる時となっています。そして、そんなノスタルジックな気持ちに浸りながら心穏やかに過ごせる時にもなっています。
今は世の中がものすごいスピードで進んでいて、効率的に合理的にやることばかり求められていますが、お盆の行事のような、ちょっと面倒な古いしきたりや風習に触れてみることで、時には立ち止まって昔の忘れていた想いや感情などを思い出してみるのも悪くないのかなと思ったりします。
ということで、私の過ごしたむかしむかしのお盆の思い出に浸ってみた一日でした。
それでは、また。