一年のうちで最も交通事故が多い月は12月とのことです。日が短くなって暗くなるのが早いこと、年末にかけて交通量が増えること、慣れない道を走る運転手が増えることなどが理由のようです。
ただ、私が損害保険会社に勤めていた時は、12月というよりは、1月のほうが事故が多いという印象でした。
会社が年末年始の休みに入った後に起こった事故は、休み明けの1月4日に対応することになっていたため、感覚としては1月が事故が多くて死ぬほど忙しい月でした。
遅くまで残業しても全然仕事が減らず、むしろ新規事故がどんどん増えてくるし。損害保険会社を退職してかなり経ちますが、この年末年始の時期になると、今もあの苦しかった日々を思い出します。
でも、今年は思いがけず、20年以上ぶりに穏やかな気持ちで、年末年始を迎えています。まったりとコタツでミカンを食べてる状況がなんだか信じられないですね。
そして、また、この時期になると、私は毎年、昔、経験した悪夢のような忘れたくても忘れられない、ある2つの交通事故をいつも思い出します。
1つは、年明けすぐの出勤時に、雪による凍結でスリップしてきた無免許で無保険の車にぶつけられた事故。
もう1つは、これは、母親の事故になりますが、年末の夜に、母親が車3台が絡む多重事故を起こし、被害者側から脅され金銭要求をされた事故です。
今回は、約10年前に起こった「凍結でスリップしてきた無免許で無保険の車にぶつけられた事故」について、元損害保険社員の自動車事故担当だった私が、どのように行動し、どのように相手と示談解決に至ったのか、その経緯について、少し語ってみたいと思います。
まず、当時の状況からですが、
前々日の夜から前日にかけて積雪10㎝くらいの雪が降りました。しかし、前日の昼過ぎには雪はすっかりやんでしまい、道路には、溶けかかった雪と少し水溜まりが少しあるような状況でした。
当日朝も雪は降っていませんでしたが、明らかに路面は凍結していました。すべての車がノロノロ運転で、私は家を出てすぐ渋滞にハマりました。
そして、渋滞の中、1キロ位走行したところで、私は、小さな橋の上で、赤信号待ちをしていました。
そこへ、右前方の細い脇道から、一台の軽トラックが走ってくるのが見えました。そして、私がいる県道(対向車側)のほうに一時停止もせずに勢いよく飛び出してきました。
その時点でもうスリップしていたのかと思いますが、そのままスルスルと滑って、私の車の方に向かって突っ込んできました。それは、もうスローモーションのような光景でした。
そして、次の瞬間、私の運転席側のドアにボンっと衝突し、ガガガガ…と鈍い音を立てぶつかりながら止まりました。
渋滞で車が何台も並んでいたのに、なんで私の車が当てられなければならないのか。今考えてもなんと運の悪いことです。
事故後、相手の車は対向車線の路肩に停車しました。当然、話し合いをするために、相手の人がこちらにすぐ駆け寄ってくれるだろうと思って、私は車の中で待機していましたが、待っていても一向に来る気配はありませんでした。
このまま逃げられるかも⁉と思い、私は急いで、潰れて半分しか開かなくなったドアの隙間から外へ出て、車のナンバーを控えられるように紙とペンを持って、相手がいる車に近づき、運転席の窓に向かって声をかけました。もう必死でした。
相手の人は40代くらいの男性でしたが、気が動転していたのか、名前や住所を聞いてもはっきりせず、なんだか様子が変でした。そして、「弁償するので警察には連絡しないでほしい」と一点張りでした。
ちなみに、ケガもなく軽い接触事故の場合、警察に連絡せずに当事者間で話をまとめてしまったという話をよく聞きます。いくら相手が親切そうな人であっても、これは絶対に良くないです。
しかも、相手が勧めてきた車屋さんに修理をお願いしてしまう人もいたりして、これは本当にトラブルのもとなので、絶対にやめたほうがいいです。例えば、修理完了後、しばらく走行していて何か不具合が出ても、もう関係ないと取り合ってもらえないことがほとんどですからね。
さらに、ケガについてですが、事故の当日は大丈夫だと思っても、数日経ってから首などが痛み出すことがよくありますので、後から病院に行きたいと思っても、
保険会社は、警察の届出をしていないと人身対応をしてもらえないことがありますので、警察への連絡は必ずしてほしいと思います。
ただし、場合によっては、事故後しばらく経ってからでも、警察への届出は可能ではあるので、届出後に、保険会社がケガの対応をするようなことも実際にはあります。
ただ、警察の方からは届出遅延ということでかなり怒られますので、どうぞ覚悟の上で。
どんなに小さい事故であっても、まずは落ち着いて相手のペースに流されないようにすることが大事ですかね。
さて、話は戻りますが、私は、相手方から警察に連絡しないでと必死にお願いされましたがきっぱりとお断りしました、相手の人は深くうな垂れていていましたが、そんなこと了解できるわけないのでお構いなしに警察に電話をしました。
それから約10分後、パトカーがやってきました。
事故現場はさらに渋滞がひどくなってしまっていたため、警察に指示され、近くにあったコンビニ駐車場までそれぞれ移動しました。
さっそく、警察官に一人ずつ呼ばれ現場まで歩いていき、事故の状況などを詳しく聞かれました。相手の方も同じように現場まで行き、私よりも長い時間、事故の状況について聞かれていました。
話が終わると、私は自分の車の中で待機するように言われ、相手の人は警察官3人と共に止まっていたパトカーに入っていきました。
それから1時間くらい経った頃、一人の警察官が私の車に近づいてきました。
私が窓を開けると、「彼…随分前から免許証が失効していたまま無免許で運転していて、あと、この軽トラックですが任意保険入っていないみたいです」と…。
「はぁ?」
一瞬、耳を疑いました。通りで警察に連絡して欲しくないわけです。
そして、さらに「無免許運転だと、さらに聴取することがいろいろあるので、このままあと1時間くらいここで待っていてください」と言われました。
こんなに悪いことが重なるものかと、私はなんて変な人に当てられてしまったのかと本当に嫌になりました。
もし、私が一度も交通事故に関わらずに生きてきたのならこの激しく凹んだ車の中で、一人きりで待っている状況に耐えられなかったかもしれません。
でも、嫌々ながら損保で6年間も事故担当をしていた私は、そんな時もどうすればいいか知っていたので冷静でいられました。経験はすべて無駄ではないですね。
今回の事故ですが、停車中の事故となりますので、基本的に、私には過失(責任)が無い0:100事故になります。
0:100事故の場合は、加害者側の保険会社にすべてお任せとなるのが普通です。自分の加入する保険会社に出番はありません。
本来であれば、私は、車を修理工場に預けに行くくらいで済む話ですが、相手が任意保険に加入していないため、そういうわけにはいきません。では、そんな時はどうすればいいのか?
それは、自力で相手方と示談交渉をしていくしかないのです。
例えば、自分の加入する任意保険会社に連絡しても、きっとこのように言われるでしょう。
「お客様に責任がないのであれば、基本的に相手方との交渉はできません」
私の加入している保険会社の担当者から概ねこのように言われました。冷たいと思われるかもしれませんが、そんなものです。
それは分かっていたので問題ないんですが、私は車両保険を付けているので、最悪相手の人から修理代を払ってもらえないことも考えて、念のために事故の受付のみしておいてもらいました。(最終的には、取り下げました)
ちなみに、この時点で病院に行くことが決まっていて、自分の保険に「人身傷害保険特約」が付帯されていているようなら、事故の状況に関わらず、治療費の自己負担がなく病院を受診できるので、自分の保険会社には、積極的に連絡しておいたほうがいいと思います。
また、話は戻りますが、
事故現場で今後の対応をいろいろなことを考えながら、さらに1時間が経過しました。しばらくして、再び警察官が近づいてきました。
すると警察の方から、「彼の聴取は終わったんですが、〇〇さん(私)からのお話を改めて記録に残したいので、近くの警察署まで一緒に来てもらえますか」と言われました。
本来なら、現場検証が終わればすぐ解放されるところ、相手が無免許だっため余計な確認が一つ増えてしまいました。
そして、私はボコボコに凹んだ車のエンジンをかけ、途中でバンパーが外れないかとビクビクしながら、パトカーに先導されその警察署へ向かいました。
ようやく到着すると、事情聴取を行う警察官がいるという部屋に案内されました。1対1の対面でいろいろ質問され、何度も聞き返されながら1時間近くこと細かく事情聴取を受けました。お昼は過ぎていましたが、かつ丼は出ませんでした(笑)
事情聴取の最後に警察の方から「相手に厳罰を求めますか?」と聞かれましたが、「特に求めません。お任せします」と答え、そして帰宅しました。
本当はあまりにも身勝手な人なのでぜひ厳罰を!と言いたいところでしたが、相手の自宅住所がかなり近くだったので、逆恨みされないように念のためそう答えました。結局、家に着いたのは14時頃でした。
相手の人とは、事故現場で会ったのを最後に、現在までとうとう会うことはありませんでした。
事故後、数日経って相手の母親から電話がありました。彼は事故の日からずっと警察に拘留されて電話ができる状態にないらしく、自分が代理でかけているとのことでした。
まず、私のケガのことをひたすら心配してくれていました。
ちなみに、損保担当者の目線でもこれは大事です。少し大げさくらいがちょうどいいです。後々あまり謝罪がなかったと揉めることが多いので。
私は、事故が起こる前から相手が脇道から走ってきてスリップまでの一部始終を見ていたので、衝突する寸前はハンドルをしっかり握りしめ衝撃に備えていたので、幸いどこも痛くはありませんでした。
周りからは、念のために病院に行ったほうがいいと再三言われましたが、数日様子を見ても何も異変がなかったので、損保時代の数多くの事例からこれは大丈夫だと判断し、結局のところ病院には行きませんでした。
もし、ケガがあるのに相手の任意保険会社に対応してもらえない場合や、自分の加入する自動車保険に「人身傷害保険特約」を付帯していなかった場合は、病院でかかった費用はいったん自分で全額負担することになります。
その後、負担した費用は相手に請求して全額返してもらうことができれば問題ないですが、返金してもらえないような場合にはその負担した治療費については、相手の「自賠責保険会社」に請求することができます。
治療費のほか、慰謝料や休業損害なども補償されますので、まずは相手の自賠責保険会社へ相談ですね。
相手の「自賠責保険会社」を確認する方法ですが、まず警察署で「交通事故証明書」の交付申請(1通600円)を行います。
証明書は手数料を払えば誰でも入手することができますので、相手にわざわざ聞かなくても、その事故証明書には、相手の個人情報や自賠責保険会社名が記載されているので、個人で簡単に確認することができます。
本来なら、相手の任意保険会社が人身対応をすべてしてくれますが、相手に任意保険がなければ、自分の「人身傷害保険特約」を使うか、特約がなければ、「相手の自賠責保険へ請求」をするしかありません。
私も、何か症状が出て病院に行くときには、自分の人身傷害保険特約を使おうかと思っていましたが、結局はその必要がありませんでした。
さて、また話は戻りますが、
相手の母親からの電話には、私は正直にケガがないことを伝えました。そして、もう早く終わりにしたかったので、修理代だけ出してもらえればいいと伝えました。
ただ、実際には、いろいろ考えたあげく修理はしませんでした。当時は、その車の走行距離がすでに9万キロを超えていたので、事故前からそろそろ買い替えようかと思い車の販売店めぐりをしていた時でした。
修理してもそれほど長くは乗り続けられないと思っていたので、事故を機に買い替えることにしました。
でも、修理代って修理しないもらえないんじゃない?と思う人もいるかもしれません。
実際には、修理する修理しないに関わらず、保険会社は、事故による損害賠償として、修理代を被害者のほうに支払うことがよくあります。
修理しないといけないルールはないんですよね。その分を頭金にして、新しい車を購入している人は多いです。でも、それでもいいんです。
損害賠償とは、「債務不履行や不法行為によって他人に損害を与えた人が、被害者に対してその損害を補償する」というものですので、その損害の補償=修理代ということになるからです。その修理代で、車を直そうが買い替えようが本人の自由というわけです。
私は当然のことながら職業柄そのことを知っていたので、さっさとディーラーで修理見積書を取り、私の銀行口座の振込先を記入したメモと一緒に封筒に入れ、相手の母親に郵送(簡易書留)で送りました。
約18万円の修理見積書でしたが、本当に全額振り込んでくれるのかちょっと信用できなかったため、一緒に入れたメモの最後には「1週間以内に支払ってもらえれば、今後一切異議申し立てはいたしません」と記載しました。
それから3日後には、私の銀行口座にきちんと振り込まれていました。そして、その振り込まれたお金を頭金にして、今現在乗っている愛車を買いました。これで、この事故の件はすべて解決となりました。
交通事故は人生で何度も遭遇することはないかもしれませんが、いざという時のために知っておいたほうが良い知識もあると思うので、私のこの体験談を少しでも参考にしていただけたらといいなと思っています。
私の母親が車3台が絡む多重事故を起こし、被害者側から脅され金銭要求をされた事故のことについては、改めて別な機会に、少し語ってみたいと思っています。
それでは、また。
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