世の中、独身の男女が増えてきたとは言え、まだまだ田舎のほうでは40代になっていたら結婚しているのが当たり前だろうという風潮が根強くあります。
40代半ばを過ぎた私は、どこに行っても当然のように既婚であることが前提ということで「お子さんはいくつなの?」といきなり聞かれます。
今、アルバイトをしている職場でも、既婚女性が圧倒的に多いせいか休憩中に話す話題と言ったら皆さんお子さんのことばかりで、やはり子供のことを聞かれました。
40歳を過ぎたころからは、とくに年配女性からの悪意のない「お子さんはいくつ?」ハラスメントがやむことはありません。
その質問をされた最初の頃は、正直に「独身です」と言ったことがありますが、あからさまに「ええっ?」と言われ驚かれ引かれてしまい、お互いなんとなく気まずくなったことをよく覚えています。
さらには、前に仕事で関わった60代の元中学校の女性の先生と一緒に食事をした際には、私が独身だと言った途端に、良い歳してどうしたのか(おかしい?)とばかりに軽く説教といいますか、あれこれアドバイスなどいただきました。
その元先生は、教師同士で結婚し子供3人は立派に独立して、定年後は趣味程度にゆるく働いているいわゆる勝ち組の方でしたので、世間的には負け組の私が何を言ったところでこの生き方に共感してもらえることは何一つなさそうでした。
2時間ほど食事をしましたが、私が独身であることが心配なのか、ずっと「こうしたらいいのよ」「それじゃダメよ」といろいろとアドバイスをしてくれていました。
年配者ですので、私も苦笑いしながら黙って話を聞いていましたが、さすがに2時間も同じ話だとだんだん嫌気がさしてきて、
「先生のように上手な生き方をしたくても、私も含めいろんな理由で自分の思い通りに上手くできない不器用な人が世の中たくさんいるんですよね、困っちゃいますね」とやんわりと言ってみたら、途中で何かを察したようで「余計なお世話だったかな…」と言って、やっと話が終わりました。
しかし、毎回、何か悪いことでもした罪人かのように独身で子供がいないと言った途端に尋問され、こんな苦痛なやり取りをわざわざするはめになります。本当に疲れます。もし男性から言われたとしたらセクハラで訴えるかデリカシーがないと怒るレベルですが、同性だとそうもいかないのが辛いところですね。
ただ、「お子さんはいくつ?」の質問をしてくるのは、共通してほぼ初対面に近い同年代か年配者がとても多い気がします。おそらく深い意味はないのだとは思いますが、普段から夫や子供のことしかあまり関心がないような方は、話のネタ作りのため単に自分と相手の共通点を見つけようと聞いているだけなのかなと感じています。
私の姉も主婦ですが、ときどき会うと話す話題と言ったらやはり旦那さんの愚痴と子供や学校、ママ友の話ばかりです。職場の人に限らずそれしか話が無いのかなといつも思いますが、とにかく主婦層はそのことが一番話したい話題なんでしょうね。
でも、主婦ではない私から一言いわせてもらえるとしたなら、その質問をする場合は、相手が独身であったり、既婚でも子供ができなかった人であったり、また人には言いたくない事情があったりと、非常にプライバシーに関わるデリケートな話に繋がる場合もあるので、もっと相手のことを考えて欲しいなとつい思ってしまいます。
そして、極めつけは正直に答えたあとのリアクションがまた気まずさを増幅させます。驚いた顔で「え?嘘?」「あ、ごめんなさい」などといわれるとこちらが困惑します。毎回、これは何かの罰ゲームなのかと思ってしまいますが、大多数の人の反応がこのような感じですので、もう仕方ないことなのだと諦めてはいます。
私自身は、たとえ相手から独身で子供がいない可哀相な人だなと思われたとしても、そう思うことは止められないですし、少なくとも職場の人には迷惑はかけていないと思っていますので何を言われても深く傷ついたりすることはないですが、
それよりも、話の中で相手の方が悪気なく質問していることが見えて、さらに、その人が私に対して聞いてはいけない質問をしてしまったという顔をして謝ってきて、場の空気が一気に悪くなることのほうが一番しんどいです。この展開いい加減やめて欲しいです。
この繰り返される展開から逃げたくて、一瞬、既婚で子なしと嘘をつくか、バツイチ設定にするか、独身で何が悪いと開き直るか、毎回かなり悩みます。
「なぜ、今その質問しなくちゃダメなの?」「無難に天気やニュースの話じゃダメなの?」と相手に問いかけたいところですが、多くの既婚女性がやっぱりそれを聞きたいんですよね。本当に困ったものです。
でも、結局のところ、嘘は必ずばれますし、この「お子さんはいくつ?」というたった一つの質問によって、関係性が悪くなり楽しくおしゃべりできなくなるのは私には不本意だったりしますので、最近はなんとなくモヤっとした言い方にするようにしています。
ただ、基本的には、その質問をされないような空気作りを心掛けています。主婦層が2,3人集まると必ず子供の話が始まりますので会話を聞きながら様子を見ます。
お互いの子供や学校の情報交換が本格的に盛り上がってきたなと感じたら、なんとなくイレに行ったり、少し離れてスマホをいじったり、うまく話題を変えたりして質問されるのを避けています。これを不自然に思われないようにやるのでとても神経を使います。
だいたいこれでうまくやり過ごすことが多いのですが、つい数日前、朝礼が始まる時に、子供が熱を出して急遽休む人の話になった際、隣りに立っていた方に「お子さんはいくつ?大丈夫?」と不意打ちをくらってしまいました。
ついにこの職場でもやっぱり来たその質問でしたが、最近は、わざわざ独身だと言うのをやめて、「いやいや、子供いないんですよね~」と明るく一言だけ答えて、なんとなく笑ってごまかしています。
そう言うと、だいたいはそれ以上質問されることもないですし「そうなんですね」で会話が終わります。この答えですと、私が独身なのか既婚で子なしなのか言葉からは読み取れないので、相手は少しモヤっとするかもしれませんが、気まずくなることもないので、その答えで許してねという感じです。
セクハラ、パワハラ、モラハラと世の中にはたくさんのハラスメントがありますが、同性からの悪意のない独身・子なしハラスメントはあまり注目されていないだけに、私のように密かにしんどい思いをしている独身女性は少なからずいるような気がします。
でも、そうは言っても、何かの調査結果では、他人は自分が思うほど自分のことを気にしていないとのことですので、深読みして必要以上に人の目を気にして傷ついて落ち込む必要もないのではないかとも思っています。
そう考えると、ほぼ初対面の人が私に本当に興味があって聞いているわけではなさそうですので、「お子さんはいくつ?」の質問も、軽いご挨拶だと思って適当に笑ってごまかすくらいでちょうど良いのかなと思っています。
独身でいると、あらゆる場面で予期せず嫌な想いをすることが本当にたくさんありますが、独身でいたことによるメリットもたくさん感じてきましたので、いちいち卑屈にならずに、マイナスのこともどんどんプラスに変えるつもりで、独自の道を切り開いていければいいなと思っています。
物は考えようですからね。
それでは、また。